瞑想による社会との関わり

4/2に慶應大学で、Joan Halifax老師が、コンパッションとマインドフルネスに関する講演および前野隆司先生との対談をされました。その中で、瞑想実践と社会活動の関係に関するヒントがありました。

僕は以前から、「個人的な瞑想実践」と「社会を良い方向へ変えていくための社会活動」の間の関係をどのように捉えればいいのかを、もんもんと考えていました。「瞑想実践をしながら瞑想の研究をしています」といったことを話したときに、「個人的な瞑想実践をして、あるがままを受け入れられるようになることで、社会紛争や差別や貧困を無くせるのですか?」といった質問を受けたことがきっかけでした。

前野先生は、様々な社会の問題をシステムの観点から解決することを専門とされています。その前野先生が、「老師は講演の中で、システムという言葉を使われていましたが、なぜ禅の老師がシステム的な物の見方をする必要があるのですか?」という質問をされました。それに対して、老師は、「社会をシステムとして捉えることができれば、どこを変えれば社会を変えられるかわかるからです。」と答えられました。また、前野先生は、「なぜ、西洋の価値観の中にいた老師が、東洋の価値観に惹かれ、禅の実践を始めたのですか?」という質問をされました。それに対して、老師は、「社会を変えるためには自分が変わらなければいけないから。」と答えられていました。

僕は、この2つの質疑応答が聞けただけで、東京へ来た甲斐があったなと感じました。社会を変えるためには自分が変わらなければならない。そこには、マインドフルネスで自分が変わるだけでなく、自分が変わることによって社会を良い方向へと変えていきたいというコンパッションが含まれていました。

社会を良い方向へと変えていくための劇的な方法というのは、そうそうあるものではないと感じています。どのような方法でも、とても時間がかかるのではないかと思います。瞑想も例外ではなく、瞑想を通じて社会を良い方向へ変えていくにはとても長い時間がかかるのだと思います。それでも一人一人が、瞑想を実践し、自分の中で調和を育み、さらに周囲の人々とも調和を育んでいけば、それは着実に社会を良い方向へ変えていく力になるのだと思います。そういうことを感じさせてくれるとても素晴らしい講演と対談でした。

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