マインドフルネスによる「OSのクリーンアップ」と「OSのバージョンアップ」
今、シリコンバレーの一部の起業家や投資家の間で、サイケデリクスの一種であるアヤワスカが流行っているようです。日本では、サイケデリクスをトピックとして扱うだけで、不穏な空気になったりしますが、こういった「サイケデリクスを合法的に摂取できるペルーに行って、摂取していますよ」という記事がBusiness Insiderというビジネスを専門とするサイトに掲載されるというのが、日本と米国の感覚の違いとして現れていて興味深いです(どちらが良いか悪いかではなく)。
http://www.businessinsider.com/entrepreneurs-awakening-ayah…
現在の米国におけるマインドフルネスやアヤワスカのムーブメントを見ていると、1960年代後半の米国における禅やLSDのムーブメントが融合してヒッピームーブメントが起きた部分と重なってきていることを感じます(社会活動が融合していたことも忘れてはいけないポイントです)。そうやって重ね合わせて見てみると、今、既存の価値観の中で息苦しさや生きづらさを感じて、なにかを変えたいという止むに止まれぬ思いを抱えている人が増えているのではないかと感じます。
しかし一方で、The Onionという風刺を専門とするサイトで、シリコンバレーの起業家や投資家が、新しいビジネスのひらめきを得るためにアヤワスカを摂取していると揶揄されたりもしています。これはもちろん架空の物語ではありますが、既存の価値観の中でその価値観をさらに強化するというたぐいの話は、笑い話では終わらないなとも感じています。
https://www.theonion.com/ayahuasca-shaman-dreading-another-…
今、日本のビジネスの世界でも、マインドフルネスが流行り始めています。僕は、同じマインドフルネスの実践法を実践したとしても、2通りの効果の現れ方があるのではないかと考えています。OSで考えるとわかりやすいのですが、1つは、OS自体がバージョンアップされていくという効果の現れ方です。このバージョンアップがされるごとに、価値観が変わる、あるいは仮想的な自己が減少していき、既存の価値観をベースに生じていた苦が減少していきます。これは最終的にはOS自体がなくなっていく可能性を秘めています。もう1つは、OSをクリーンアップして、空容量が増加するという効果の現れ方です。OS自体は変わらないので、従来の価値観のもと、空いた容量に新たな仕事を詰め込んでしまうという可能性が高くなります。これを続けるとOSはより強固なものとなってしまい、既存の価値観をベースに生じていた苦がさらに増加していきます。
今、既存の価値観の中で息苦しさや生きづらさを感じて、なにかを変えたいという止むに止まれぬ思いを抱えて、マインドフルネスの実践を始めたのに、価値観を変えることで苦しみを減らすのではなく、知らず知らずに価値観を強固なものにして苦しみを増やしてしまっている人がいるのではないかと危惧しています。
僕自身、資本主義システムの中でその恩恵を得ながら生きており、資本主義システム自体を否定する気はないのですが、いきすぎた資本主義を変えていくために、自分たち一人一人の価値観をほんの少しずつ変えていくということが大切なのではないかと感じています。
(アヤワスカの効果研究や脳科学研究はまだ始まったばかりで、有害事象研究などはまだほとんど進んでいません。ただし、少なくともマインドフルネスや瞑想と同様に、統合失調症を抱えている人が摂取するのはリスクが高いと考えられているようです)